経営者必見、会社が破産した場合の社員を守る方法

社長
私は創業25年の内装工事を営む企業の経営者です。ここ数年、赤字が続き、資金繰りも非常に厳しい状態が続いており、残念ながら倒産は免れない状況となっています。会社と代表者の私はこのまま自己破産手続に移行予定ですが、従業員の給料は一部未払となっており、また、退職金も支払うことが出来ません。いままで会社の為に尽くしてくれた従業員の生活は守られるのでしょうか?
弁護士吉村雄二郎
破産は、借金をリセットし、再生するための手段として、法律が認めた制度です。また、破産に関して間違ったイメージを持っている方が多いのですが、破産手続をしても、経営者及びその家族は守られます。また、一定の条件の下に自宅を残すこともできます。まずは、破産手続がどういうものか知って、恐怖心を払拭してください。そして、なるべく早く、企業再生の弁護士へ相談してください。
1 破産手続と従業員の今後
2 破産手続と従業員の未払賃金
3 破産手続と従業員の今後の収入
4 従業員による会社再生

1 破産手続と従業員の今後

(1) 従業員の行く末

会社の破産を行うということは、基本的に事業を廃止しますので、従業員には退職してもらいます。

(2) 解雇

解雇通知を行い、解雇予告手当金を支払う手続を取ります。

この解雇予告手当は、以下で説明する未払賃金立替制度の保障を受けることができませんので、未払賃金よりは優先的に支払うとよいでしょう。

もっと言えば、従業員に対して解雇予告手当金や自己破産の手続費用を準備できるだけの資金が残っている段階で、経営者は破産手続を決意することが迫られると言えるでしょう。

2 破産手続と従業員の未払賃金

(1) 未払賃金立替制度

従業員への給料の未払いがある場合、従業員は未払分の最大80%を労働者健康福祉機構(厚生労働省所管の独立行政法人)から立替払いを受けることができます。つまり、最大80%は国の保障を受けることができるのです。 詳細は、未払賃金立替制度の詳細は、こちらをご参照ください。

(2) 破産手続内での回収

国の補償を受けられなかった部分(20%の部分)については、破産手続の中で支払を受けることが出来ます。但し、支払の原資はあくまでも会社に残っていた資産になりますので、それが乏しい場合は、支払や配当を受けることはできないでしょう。

3 破産手続と従業員の今後の収入

(1) 失業保険

雇用保険に加入している場合、従業員は、離職票などを持ってハローワークで手続きをとれば、速やかに失業保険を受けることができます。

会社としては、退職に際して、離職票などを従業員に交付することが重要です。

弁護士吉村雄二郎
会社の破産を決意して、従業員へ説明するのは、破産申立をする直前であることが通常です。従業員は突然の会社の倒産・失業の事態に混乱し、暴動騒ぎが起きることも希ではありません。また、以上説明しました従業員への解雇、解雇予告手当の支払、未払賃金立替制度の説明、失業保険、社会保険の手続などについても、手続をしっかりとることはもちろん、従業員に対して分かりやすく説明してあげなければなりません。
必ず破産手続に精通した弁護士に依頼して手続、説明を行って下さい。
なお、当事務所では、必ず破産手続の直前に、担当弁護士が会社へ赴き、従業員説明会を行います。会社の社長にも同席して貰い、倒産について誠意を持って説明を行います。また、解雇予告手当の支払、未払賃金立替制度の説明、失業保険、社会保険の手続などについても資料を準備した上で、分かりやすく説明を行います。このように周到に準備して行うことにより、ほとんどの事案で、従業員の理解・納得を得ることができます。
会社の状況が苦しいことは実は従業員も分かっていることが多いものです。従業員説明会終了後、「社長、今までありがとうございました。社長はまだ会社の清算が残っていて大変だと思いますが、どうかお体に気をつけて頑張ってください。」と挨拶をして別れる従業員も何人もいました。結局は、最後まで出来る範囲で誠意をもって対応することが大事なのだと思います。

(2) その他

会社の破産は、債権者への対応、取引先への対応、従業員への対応、破産を実行する(Xデー設定)のタイミング、破産申立直後の対応など、多くの検討事項があります。

また、法律的に複雑な問題も多く存在し、やり方を誤ると、関係者に多くの迷惑を掛けるだけでなく、経営者の再起を図るという目的も達成できなくなることもあります。

早期に破産手続に精通した弁護士に相談することによって、結果が大きく異なることも非常に多くあります。

破産する直前ではなく、資金繰りが厳しくなった段階から相談されることをお勧めします。

4 従業員による会社再生

破産手続の前に、経営状態の悪化した会社(旧会社)の従業員の一部が新会社を設立し、そこへ他の旧会社の従業員も移籍しつつ、旧会社の取引先にも事情を説明して、新会社と今後の取引を行ってもらうという方法があります。この場合、旧会社は、自己破産手続とり、借金を清算しますが、新会社はかつての取引関係を使って存続し続けることができます。但し、この旧会社から新会社へのビジネスの移転は「事業譲渡」に該当するとして、旧会社の破産手続において、破産管財人より事業譲渡の対価を支払うように要求される可能性があります。ただ、当事務所の経験では、破産管財人へ雇用の維持、事業の維持などを説得して、事業譲渡対価の支払いをせずに済ませることも出来た実例があります。非常に難しい判断及び高度な技術ノウハウが必要になりますので、このような経験のある専門性の高い弁護士へ依頼することは必須になります。

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