ここ数年、赤字が続いており、資金繰りも厳しくなってきました。先ほど再生専門の弁護士・税理士と共に現状を分析した結果、営業段階での赤字が慢性的になっていることがわかり、これを是正しなければ再建はおぼつかないことが分かりました。
赤字解消の為に、経費削減に着手しなければならないと思うのですが、具体的な方法について教えて下さい。
営業利益=売上高-売上原価(仕入)-販管費(人件費、経費)です。
従いまして、営業利益の赤字を解消するためには、
(1) 売上高 UP↑ して
(2) 売上原価 と 販管費 を DOWN↓
することが重要です。
(2)に関して、経費削減、すなわち、リストラが重要です。
リストラ策は大きく4つあります。
① 財務リストラ(有休資産の償却等)
② 事業リストラ(不採算事業の閉鎖など)
③ 業務リストラ(業務改善、経費削減など)
④ 人事リストラ(賃金カット、整理解雇など)
これらを組み合わせながら再建計画に織り込み、実行することが重要です。
2 ①財務リストラ(有休資産の償却等)、②事業リストラ(不採算事業の閉鎖など)、③業務リストラ(業務改善、経費削減など)、④人事リストラ(賃金カット、整理解雇など)を計画的に実行する
1 営業黒字化の手段としてのリストラ
さて、「再生可能性の調査」のところで、
①営業利益の段階で黒字計上か可能かどうか、
が再建の上で一つの重要なポイントであることを説明しました。
では、営業利益の段階で赤字の場合、どうやって解消すればよいのでしょうか?
そもそも
と説明しました。
赤字というのは、営業利益がマイナスになっていることを意味します。
とすれば、これをプラスにするためには、誤解を恐れずに単純に考えると、
売上原価 と 販管費 を DOWN↓
すればよいことになります。
売上高を上げることについては、別のところで説明いたしますが、
経費の削減に関しては、リストラ策を講ずる必要があります。
2 財務リストラ(遊休資産の売却等)
(1) 財務リストラとは?
まず、遊休資産、つまり経営上処分しても差し障りのない資産を現金化することを検討します。
これは、比較的簡単にできることなので、
そんな資産はとっくに現金化しているよ!という会社も多いとは思いますが検討します。
- 株券、ゴルフ会員権などの有価証券
- 保険
- 不動産
(2) セール&リースバック
なお、不動産に関しては、協力を得られるのであれば、一旦土地建物を協力者へ売却し、それを賃貸するという方法(セール&リースバック)も取り入れます。
(3) 債務の圧縮(デットアプローチ)
- 短期借入金を長期借入金に借り替える
- 金利の見直し(高金利を低金利へ)
- 役員借入金を債務免除または資本に組み替え
- DES
債務を資本に転換することを言います。債権放棄と同様に会社の財務内容まで抜本的に改善させる効果があります。但し、中小企業が活用するには難しい側面があります。
- DDS
債権を劣後債権に転換することを言います。中小企業再生支援協議会で利用される「資本的劣後化ローン」がこれに該当します。
- 債務免除
金融機関が一部の債権を放棄することによって、会社の資金繰りのみならず、財務内容まで抜本的に改善する方法です。債権者に直接債務免除を求める方法のほかに、会社分割や事業譲渡等により「第二会社」を立ち上げて、この「第二会社」に事業上の資産・負債を承継させて、旧会社は破産や特別清算で処理をする、いわゆる「第二会社方式」もあります。
などを行います。
3 事業リストラ(不採算事業の閉鎖など)
(1) 事業の選択と集中
- コア事業、ノンコア事業の選別
- 不採算事業の撤退(風評リスクに注意)
- 不採算店舗等の統廃合
- 経営資源の集中投資
(2) M&A
- 会社分割、事業譲渡
- 第二会社方式
会社分割や事業譲渡等により「第二会社」を立ち上げて、この「第二会社」に事業上の資産・負債を承継させて、旧会社は破産や特別清算で処理をする方式です。
4 業務リストラ(業務改善、経費削減など)
(1) 収益改善策
- 販売単価:価格交渉
- 販売数量:取扱商品、販路拡大、営業力アップ、マーケティング戦略
(2) コスト削減
- 売上原価の低減
- 人件費の圧縮
- 販管費の削減
- 支払金利負担軽減
5 人事リストラ(賃金カット、整理解雇など)
(1) 聖域なきリストラの断行
最後に、人事リストラです。 「リストラ」というと人員削減をイメージすることが多いのではないでしょうか?
人件費は、「固定費」の中でもウエイトが高く、これが高すぎるが故に経営難に陥っている企業も実は少なくありません。
しかし、人件費は、従業員の生活の糧です。安易にカット又は減額することは、従業員のモチベーションに重大な影響を与えることになります。
また、我が国の強烈な労働法制下(労基法、労働契約法、最低賃金法等)では、非常に厳しい制限がかかっており、法的な有効性が問題となることもしばしばです。
とはいえ、経営難に陥っている企業では、「聖域」はありません。
再建に向けて、従業員の協力を得て、人件費であっても毅然たる態度でてこ入れしなければならない場合もあります。
(2) 約40%の企業が何らかの雇用調整策を実施している!
厚生労働省(平成25年8月「労働経済動向調査」)
(3) ポイント!
・慎重に検討してから実施する
・専門家(弁護士)の助言を受けながら実施する必要がある。
(4) 総額人件費を下げる方法
概ねこの順番で実施していきます。
(5) 整理解雇の実行
整理解雇を実行するためには、4つの要件を満たす必要があります。
② 解雇回避努力義務
③ 被解雇者選定の合理性
④ 整理解雇手続の妥当性